 1862年に設立された加賀藩種痘所を源流とする金沢大学は,150年近くの歴史と伝統を誇る総合大学であり,日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。2004年「国立大学法人」へと移行し,全国屈指の広さのキャンパスの中,今,大きな飛躍を目指して改革を進めています。私たちは,金沢大学における教育,研究,社会貢献の活動が,21世紀の時代を切り拓き世界の平和と人類の持続的な発展に資するとの認識に立ち,「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を大学改革の理念として大学憲章に掲げています。私たちの改革を実現すべく,今まさに,従来の学部・学科制から「3学域・16学類」という教育組織のもとに,「進化した金沢大学」を目指してのスタートをきりました。18世紀に始まる産業革命以来の,大量生産・大量消費をパラダイムとする工業文明は終焉を迎え,ポスト工業文明への流れが一段と加速化しています。「文明の大転換期」とも言われる今日,人類は資源・エネルギー,食料,人口,気候・環境などの地球規模の問題に直面しています。グローバル化の進む国際社会にあっては,民族の対立,国家間の政治・経済の衝突など様々な問題を生み出しています。また,国内社会にあっては,急速に進む少子高齢化,地方文化の衰退,世代間の断裂など,解決すべき問題は山積しています。ポスト工業文明の方向性を模索し,複雑な問題を解決するには,学部・学科という従来の学問分野が抱える問題点を克服し,学問分野の枠を越えた幅広い知識と能力を有する人が求められています。「3学域・16学類」制は,現代社会が求める人材を育むための幅広い課題に対応できる柔軟な教育組織であり,「学生のための大学」の構築を目指したものです。人間社会学域,理工学域,医薬保健学域の3学域の下に,主たる教育単位となる学類が置かれています。学域・学類制には大きな特色があります。人間社会学域,理工学域にあっては,一つには,入学後に専門分野を選び学ぶ「経過選択制」を導入したことです。これまで,学ぶべき専門分野は入学時に決められていましたが,入学後に基礎を学びながら専門分野を選べる仕組みとなりました。今ひとつは,「主専攻・副専攻制」です。学生自らが自らの将来を考えながら,主体的に履修計画を立てることができるシステムです。医薬保健学域にあっては,専攻する教育分野は決められていますが,各自の進路での専門性に加え,チーム医療を重視した医療専門職の連携について,医療人としての自覚を涵養する教育の場が用意されています。金沢大学が位置する金沢市は,日常生活にも伝統文化が息づき,犀川や浅野川,卯辰山や兼六園などの自然環境に恵まれ,学生が思索し学ぶにふさわしい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ,伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた「創造都市」ともいえます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み,地域はもとより幅広く国内外から来た意欲ある皆さんが,新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。 |