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《夢十夜》之第一夜

放大字体  缩小字体 发布日期:2011-08-22  浏览次数:708

こんな夢を見た。

腕組をして枕元に(すわ)っていると、仰向(あおむき)に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭(りんかく)(やわ)らかな瓜実(うりざね)(がお)をその中に横たえている。真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、(くちびる)の色は無論赤い。とうてい死にそうには見えない。しかし女は静かな声で、もう死にますと判然(はっきり)云った。自分も(たしか)にこれは死ぬなと思った。そこで、そうかね、もう死ぬのかね、と上から(のぞ)き込むようにして聞いて見た。死にますとも、と云いながら、女はぱっちりと眼を()けた。大きな(うるおい)のある眼で、長い(まつげ)に包まれた中は、ただ一面に真黒であった。その真黒な(ひとみ)の奥に、自分の姿が(あざやか)に浮かんでいる。

自分は()(とお)るほど深く見えるこの黒眼の色沢(つや)を眺めて、これでも死ぬのかと思った。それで、ねんごろに枕の(そば)へ口を付けて、死ぬんじゃなかろうね、大丈夫だろうね、とまた聞き返した。すると女は黒い眼を眠そうにたまま、やっぱり静かな声で、でも、死ぬんですもの、仕方がないわと云った。

じゃ、(わたし)の顔が見えるかいと一心(いっしん)に聞くと、見えるかいって、そら、そこに、写ってるじゃありませんかと、にこりと笑って見せた。自分は黙って、顔を枕から離した。腕組をしながら、どうしても死ぬのかなと思った。

しばらくして、女がまたこう云った。

「死んだら、()めて下さい。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちて来る星の破片(かけ)墓標(はかじるし)に置いて下さい。そうして墓の傍に待っていて下さい。また()いに来ますから」

自分は、いつ逢いに来るかねと聞いた。

「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出るでしょう、そうしてまた沈むでしょう。――赤い日が東から西へ、東から西へと落ちて行くうちに、――あなた、待っていられますか」

自分は黙って首肯(うなず)いた。女は静かな調子を一段張り上げて、

「百年待っていて下さい」と思い切った声で云った。

「百年、私の墓の(そば)に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」

自分はただ待っていると答えた。すると、黒い(ひとみ)のなかに(あざやか)に見えた自分の姿が、ぼうっと(くず)れて来た。静かな水が動いて写る影を乱したように、流れ出したと思ったら、女の眼がぱちりと閉じた。長い(まつげ)の間から涙が頬へ垂れた。――もう死んでいた。

自分はそれから庭へ下りて、真珠貝で穴を掘った。真珠貝は大きな(なめら)かな(ふち)(する)どい貝であった。土をすくうたびに、貝の裏に月の光が差してきらきらした。湿(しめ)った土の(におい)もした。穴はしばらくして掘れた。女をその中に入れた。そうして柔らかい土を、上からそっと掛けた。掛けるたびに真珠貝の裏に月の光が差した。

それから星の破片(かけ)の落ちたのを拾って来て、かろく土の上へ乗せた。星の破片は丸かった。長い間大空を落ちている()に、(かど)が取れて(なめら)かになったんだろうと思った。()()げて土の上へ置くうちに、自分の胸と手が少し暖くなった。

自分は(こけ)の上に坐った。これから百年の間こうして待っているんだなと考えながら、腕組をして、丸い墓石(はかいし)を眺めていた。そのうちに、女の云った通り日が東から出た。大きな赤い日であった。それがまた女の云った通り、やがて西へ落ちた。赤いまんまでのっと落ちて行った。一つと自分は勘定(かんじょう)した。

しばらくするとまた唐紅(からくれない)天道(てんとう)がのそりと(のぼ)って来た。そうして黙って沈んでしまった。二つとまた勘定した。

自分はこう云う風に一つ二つと勘定して行くうちに、赤い日をいくつ見たか分らない。勘定しても、勘定しても、しつくせないほど赤い日が頭の上を通り越して行った。それでも百年がまだ来ない。しまいには、(こけ)()えた丸い石を眺めて、自分は女に(だま)されたのではなかろうかと思い出した。

すると石の下から(はす)に自分の方へ向いて青い(くき)が伸びて来た。見る間に長くなってちょうど自分の胸のあたりまで来て留まった。と思うと、すらりと(ゆら)(くき)(いただき)に、心持首を(かたぶ)けていた細長い一輪の(つぼみ)が、ふっくらと(はなびら)を開いた。真白な百合(ゆり)が鼻の先で骨に(こた)えるほど匂った。そこへ(はるか)の上から、ぽたりと(つゆ)が落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動いた。自分は首を前へ出して冷たい露の(したた)る、白い花弁(はなびら)接吻(せっぷん)した。自分が百合から顔を離す拍子(ひょうし)に思わず、遠い空を見たら、

)の星がたった一つ
(またた)いていた。

 

「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。







 
 
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